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スビャトスラフ・リヒテル with ユーリ・バシュメトリサイタル
(1986年 9月29日 新宿文化センター)
ロシアが生んだピアノの巨人、スビャトスラフ・リヒテルについては、幸運にも一度、実演に接することができた。ヴィオラのユーリ・バシュメトとともに来日したリサイタルで。

1986年9月29日
場所:東京・新宿文化センター
プログラム:
<<ヒンデミットのヴィオラ・ソナタ作品11の4>>
<<ブリテンのラクリメ>>
<<ショスタコーヴィッチのヴィオラ・ソナタ作品147>>


確か、当初予定していたプログラムとは違う内容になり、上のようになったと記憶している。開場されて、ポツンと立っていた案内看板に、「演奏者の希望により、プログラムは変更されました」とあった。それでも、ほっと胸をなでおろしたものだ。リヒテルはキャンセルが多いことで有名だったので。


元々のプログラムが何であったかは覚えがないが、ピアノソロ曲ではないことに落胆を感じたのは確かだと思う。しかし、結果的にはプログラムの変更は幸運をもたらしてくれた。

登場したリヒテルはメガネをかけ、楽譜をもってステージに現れた。しかつめらしい表情で軽くお辞儀をし、すぐにピアノに向かう。ヴィオラのバシュメトの準備が整うと、一瞥した途端に音楽は始まった。

記憶が正しいとすると、最初の曲は<<ヒンデミットのヴィオラ・ソナタ作品11の4>>。

この曲は正直いって、退屈してしまった。初めて聴く曲ということもあり、またヴィオラとピアノの二重奏という地味な楽器形態でもあり。どのような曲で、どのような演奏であったか、ほとんど記憶に残っていない。眠気すら襲ってしまった……。

休憩を挟んだ後の後半は、自分にとって全く違う印象を与えてくれた。

まず、ブリテンの<<ラクリメ>>。これは単一楽章で、いくつかの楽想が切れ目なく演奏される曲なのだが、前半のヒンデミットに比べ、明らかに自分の好みに近しい内容なので、眠りに襲われることはなかった。

バシュメトのヴィオラも次第に聴きなれてきたせいか、音の深さが聴き取れるようになってきた。そして何よりリヒテルが楽譜に食い入るように見詰めながら、やや背を丸め、ひたむきにピアノに向かい、奏する姿が印象的だった。リヒテルのお家芸といもいうべき強打は、彫刻家が大理石の塊から塑像を「ゴッゴッ」と彫り出していく様を彷彿とさせた。

「これだ、これだ、これが待ちに待ったリヒテルの打鍵だ!」と心の中で叫びながら、伝説の演奏にじかに触れることのできた喜びが押し寄せていた。
(2につづく)
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