退院前夜に思うこと

入院最後の夜はいつものことだけれど、気持ちが少し高揚する。

検査や治療を何とか乗り越えることができたという幾分かの達成感と、我が家に帰ることができるという期待感がそうさせるのだろう。

何度も経験していながら、入院時はズンと重い何かを胸のうちに抱えながら病室に足を踏み入れるけれど、出ていく時は、憑き物が取れたように軽くなる。

当たり前のことだけど、不思議なものだ。

私は特に、この退院前夜の、消灯までの時間がこの上なく好きだ。

検査も治療もすべて終わり、あとは何もすることはない。

この無の時間が大好きだ。

きょうもお隣さんがはつらつと退院していかれた。

もう一人のお隣さんはまだ術後間もないので、もうしばらくは辛抱が必要なのかもしれない。

ともあれ、ここを出れば、それぞれの変わらない日常が待っている。

身体に生じてしまった異常を取り除き、正常に戻し、日常に返していく。

この尊い労作業がこの病室で営々と繰り返されてきたと思うと、頭が下がる思いがする。

振り返れば、自分も44歳で余命半年を告げられたものの、命を救われ、そして55歳にして、人工透析で生かされていく。

しっかり生きていかなければ。

ベッドサイドの見慣れた光景もとりあえずきょうまで。5日間で結局お風呂は一回も許可が下りなかったから体が臭う
ベッドサイドの見慣れた光景もとりあえずきょうまで。5日間で結局お風呂は一回も許可が下りなかったから体が臭う

和やかな職場環境がいい医療行為を作ることを実感

きょう、2度目の人工透析を行った。

きのう穿刺で苦労したこともあり、事前にホットタオルで腕を温めてもらう。

その効果はてきめんで、穿刺一発クリアは、本当にありがたい。

2回目とあって、きのうのような緊張や寒気にも襲われず、至極快適な状態で始まった。

きょうは片手が使えるので、持ち込んだスマホで音楽を片耳に聴くことに。

片耳だけにするのは、スタッフに声をかけられた時、すぐ気づくように。

これは日常からの習慣としている。

片耳で音楽を聴きながらも、もう一方の片耳からは、スタッフの皆さんの会話が漏れ伝わってくる。

中でも、ユニークな内容を次々繰り出す若手男性の話には思わず釘づけになってしまった。

例えば、「俺って、存在感薄いみたいなんですよ。いつも会っている人から、おお!久しぶり!なんて言われることが多くって」「この前、自販機で飲み物を買ったら、お釣りが中国の硬貨だったんですよ」「マックでエッグマフィンを頼んだんですけど、肝心のエッグが入ってなかったんですよ」等々……。

耳をそばだてながら、思わずニンマリにやけてしまった次第。

もちろん、この若手スタッフの私語を批判しているつもりはなく、むしろ透析室の空気を和ませてくれる一服の清涼剤的な存在と感じたということ。

むしろ、こうした、たわいのない話ができる職場は、スタッフや患者にとっても望ましい環境ではないかと思った。

横浜の病院で発生した殺人事件の真の要因は知るべくもないけれど、きょうの病院のような明るさというか、のびのび感がなく、ギスギスした空気が支配していたのだろうかと憶測されたりもする。

そう思うにつけ、自分は基本的にどこに行っても、病院には恵まれていることをありがたく感じる。

今回の病院は導入初期の臨時透析だけだったが、極めて重要な導入を何事もなく終えることができ、深く感謝している。

退院はあす午後の予定。

透析を終え、エスプレッソで一服。入院中のコーヒーってなんでこんなにおいしいんだろう
透析を終え、エスプレッソで一服。入院中のコーヒーってなんでこんなにおいしいんだろう。写真の撮り方が下手なのか、横になってしまった

人生初の人工透析を体験

きのうは人生初の人工透析を体験した。

いろいろあったが、ともあれ無事終了したということで、ほっとしている。

初めてとあって緊張している私の気持ちをほぐすように、声かけをしていただいた医師やスタッフの皆さんの気遣いがありがたかった。

具体的には3時間かけて1000mlの水分を抜くというもの。

尿素窒素が100を超えて段階で、いきなりフルできれいにしてしまうと、かえって体のバランスを崩してしまうので、通常の何割かという軽めの透析を木金の二日間で行うのだという。

透析が始まって、10分としないうちに感じたことは、これまでパチンコ玉を脚の中に埋め込まれているのではないかと思うほどに重くて突っ張っていたものが、スーッと、まさに音を立てるように引いていったこと。

医師は胸水による胸苦しさの方を心配していたが、それは自覚症状としてはあまりなく、つらいのはとにかく脚の重さだったので、この効果(思いこみも多少はあるとは思われるものの)には驚かされた。

1時間を過ぎた辺りで、うとうとと眠くなり、しばらく眠ってしまう。

きつかったのは最後の1時間だった。

激しい尿意を催してしまった。

あと1時間持つか、いや持たさなければならない。

ここで申告してしまうと、スタッフの皆さんに無用な心配をかけるので、必死に耐えた。

そしてようやく終了のチャイム(香りのプチポットだったか、メリーさんの羊だったか?)が鳴り、これでようやくトイレに行けると思い、スタッフの方に、「おしっこがしたくなってしまったんですよ」と申告。

スタッフの方は、止血に15分かかりますが我慢できますかと。

15分の延長はつらいが耐えるほかなかった。

ということで、無事止血され、トイレに駆け込む。

透析をしている間におしっこをしたくなってしまうのも、まだ自尿が作られている証拠ではあるけれど、これが次第に出なくなってしまうのだというから、透析中のおしっこ問題も時間の問題なのだろう。

そんなこんなの初透析だったけれど、生涯にわたってつきあっていくことになる人工透析には、これからも最大限の敬意と感謝の念をもって毎回臨んでいきたいと思う。

そういえば、きのうは右手に酸素計測がつけられていたので、両手が塞がれてしまったが、きょうは片手がフリーになるらしい。

きのうはテレビを見るほかなかったが、きょうはスマホを持ち込んで、音楽を聴きながら、3時間をゆっくり過ごすことにしよう。

そう、透析直前のトイレも忘れないようにしないと。

穿刺の際、痛みを和らげるテープ、あまり効き目がなかったような
穿刺の際、痛みを和らげるテープ、あまり効き目がなかったような