退院前夜に思うこと

入院最後の夜はいつものことだけれど、気持ちが少し高揚する。

検査や治療を何とか乗り越えることができたという幾分かの達成感と、我が家に帰ることができるという期待感がそうさせるのだろう。

何度も経験していながら、入院時はズンと重い何かを胸のうちに抱えながら病室に足を踏み入れるけれど、出ていく時は、憑き物が取れたように軽くなる。

当たり前のことだけど、不思議なものだ。

私は特に、この退院前夜の、消灯までの時間がこの上なく好きだ。

検査も治療もすべて終わり、あとは何もすることはない。

この無の時間が大好きだ。

きょうもお隣さんがはつらつと退院していかれた。

もう一人のお隣さんはまだ術後間もないので、もうしばらくは辛抱が必要なのかもしれない。

ともあれ、ここを出れば、それぞれの変わらない日常が待っている。

身体に生じてしまった異常を取り除き、正常に戻し、日常に返していく。

この尊い労作業がこの病室で営々と繰り返されてきたと思うと、頭が下がる思いがする。

振り返れば、自分も44歳で余命半年を告げられたものの、命を救われ、そして55歳にして、人工透析で生かされていく。

しっかり生きていかなければ。

ベッドサイドの見慣れた光景もとりあえずきょうまで。5日間で結局お風呂は一回も許可が下りなかったから体が臭う
ベッドサイドの見慣れた光景もとりあえずきょうまで。5日間で結局お風呂は一回も許可が下りなかったから体が臭う