人間観察

通勤途上で見かける印象深い人々(12)昭和アイドルさながらの男性に感動

電車とは不思議なもので、全くの赤の他人が混在する四角い箱の中に、数分から数十分の間、運命をともにするという、非日常がそこにある。

袖すり合うも他生の縁ということわざもあるように、たまたま偶然、そこに居合わせた人と至近距離であったり、まさに衣服が触れ合ったり、会話が聞こえてきたりする。

何度も書いてきたように、これは得難き経験の場だと思う。

というのは、私の趣味の一つは、人間観察だから。

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最近、電車に乗っていて、最も驚いたのが、座席の脇の手すりに4本もの透明傘がかけられていたこと。

観察すると、座席を立つだれも傘を持って行こうとしない。

ということはどうやら忘れ物のようだ。

確かに午後から晴れたからとはいえ、「これは忘れすぎだろう」と思わずつぶやいた。

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複数で乗り込んできた人たちは、往々にして会話をするものだ。

これは当たり前のことであって、不思議ではない。

その中で、かなり衝撃的な言葉を聞いてしまった。

「今のボイン、見たか? いや〜すごかったなあ」

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中年の男二人組の会話で、察するに、座席を立って降りていった女性のことを指してのことらしい。

思わず、どんな人の発言なのか、見てしまったが、私の視線には気付かず、余韻に浸っている模様だった。

周囲には多くの女性がいる。

はばからない男性。

いろいろな人がいるものだ。

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とある駅のホームで、左腕に巻きつけられた時計を見る人がいた。

ここまでは当たり前のことだが、腕の上げ方が上方に斜め45度、しかも右腕は腰を支えている。

さらによくよく男性のスタイルを観察すると、かつての昭和のアイドルたちのユニフォームのような出で立ち。

さらにさらに、もみあげまで。

一瞬にして昭和時代の懐かしさを思い起こさせてくれた男性には感謝の念さえ湧いた。

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通勤途上というものは、とかくトラブルに見舞われやすいものだ。

私もかつて逆方向を歩く男性に立ちはだかった時、タックルされて倒されそうになったこともある。

一方で、上記のように、ほっこりさせてくれたり、感動させてくれたりすることもしばしばある。

そう、だから私は電車内では、スマホも見ないし、音楽も聴かないようにしている。