人間観察

通勤途上で見かける印象深い人々(14)お年寄りたちのパワーに圧倒された30分

いつもの車両に乗り込もうとすると、割り込みするぞくらいの勢いで私の横からプレッシャーをかけてくるマダム二人がいたので、ここは社会ルールを守っていただきますと、譲らず一番で乗り込んだ。

私は席に座らない主義なので、空いた優先席に二人のマダムは脱兎のごとく飛びつき、安堵の表情を浮かべていた。

ただ、空席は相向かいに一つずつだったので、それぞれやや残念そうな表情も浮かべていたが。

二人とも全身、おしゃれなファッションに身をつつみ、手には杖を携えている。

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発車して間もなく、優先席の方から、「おお、○○君じゃないか」という、やや大きめな声が聞こえたので、視線をやると、一番端の男のお年寄りが、また相向かいのお年寄りの男性に声をかけていたのだった。

声をかけられた男性は、「いやいや気づきませんで、どうも」と応じていた。

男性は続けて、「これから同級生と東京駅で待ち合わせて、伊豆へ泊まりに行くんですよ」と。

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すると最初の発声の男性が、「ああ、俺もなんだ」。

向かいの男性、「へえ?」

当然の反応だろう、私も何が同じなのかがこの一言では判別できなかったから。

伊豆が同じなのか、東京駅が同じなのか、同級生と落ち合うが同じなのか。

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そんなことを考えていると、マダムの一人がすくと立ち上がり、「こちらにどうぞ」と初発の男性に声をかけた。

すぐ立ち上がり、「いいんですか、ありがとうございます」と。

マダムは、小声で「私もこちらに友達がおりますから」と話していた。

男性は「はあはあ」とうなずき、席に着いた。

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見事な席交換によって、男性陣、女性陣分かれての会話の話が咲いた。

満開という表現がぴったりなほど、会話が弾んでいた。

「だれそれがいつ亡くなった」「どこそこのカイロはとてもいいらしい」等々。

男性陣も女性陣も、見かけからすると80歳は悠に越していると思われる。

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これらの一部始終を観察させてもらって思ったこと。

積極的に出掛けること、人との交流を大事にすること、よく話すことの3つは、やはり健康長寿の秘訣なのだなと。

最近、人との交流がめっきり減りつつある私としては、やや考え直さないといけないなとも感じた。

それにしても、お年寄りたちのパワーに圧倒された30分間だった。