人工透析

透析クリニックで朗らかさナンバー1のSさんは距離感の達人だった

私が通う透析クリニックには50人ほどのスタッフがいて、日々、患者の面倒を見てくれている。

週3回の透析を継続していかない限り、命をつないでいくことができない身としては、スタッフの皆さんは本当にありがたい存在だと思う。

改めて感謝したい。

50人もいるスタッフだから、個性や性格も全くばらばらであることが、ある意味面白い。

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こちらが話しかけなければ、一切、世間話をしようとしないスタッフもいれば、逆に話しかけてくる人もいる。

クリニックとしての決まりは特になく、話すも話さないも各人に委ねられているようなので、よりそれぞれの個性が伝わってくる。

私は日常会話は、人間関係の潤滑油であるという考えを持つ方なので、話しやすい人には言葉をかけるし、話したくなさそうだなと感じる人には無言を貫く。

なので、話す相手はほぼ決まってきた感がある。

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その中で、リーダー格のSさんという看護師さんがいて、この方、とにかく明るく朗らか。

その調子が常に変わらないので、すごいなあ、どうしているんだろうと思うことしばしだった。

私自身も、機嫌の悪さなどを人にぶつけたりすることをよしと思わない方なので、Sさんはどのように自身を律しているのだろうと聞いてみたいと思っていた。

そして、そのタイミングがようやくきた。

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「Sさんはいつも朗らかでいらっしゃいますが、何か心掛けていることはあるんですか」と。

Sさん、「ん〜、としばらく天をあおいだ後、心掛けというか、患者さんとの接し方に気をつけていることはありますよ」と、こんなことを話してくれた。

「患者さんによって、言葉使いを使い分けます。親しみをもってフランクに話せる方、そうではない方と」

ああ、なるほど、確かに移転された隣のTさんとの軽妙洒脱なやりとりは記憶にある。

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要は、患者一人ひとりのアイデンティティやキャラクターをしっかり見極め、かつその距離感を絶妙に測りつつ、接するよう努力することが、あの朗らかさの源泉なのだろう。

距離道楽を自認する私としては、極めて合点がいったし、まさにそれこそ人間関係構築の極みであろうと実感した。

やはり、人の上に立ち、人をたばねていく存在の方は、しっかりとした考え方のもと、スタッフ業務を行っているのだなと感心させられた。

患者も人間である以上、一律ではなく、それぞれの生き方をもっていることを認識してくれていることはありがたいことだ。

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ちなみにSさんの私に対する言葉は、極めて丁寧で、Tさんに対するようなフランクさはあまり感じない。

それは私自身がフランクな人間ではないことからくるのだろうか。

SさんとTさんのやりとりを聞いていて、ちょっとうらやましいと感じたことはあった。

とはいえ、自身のキャラクターが基本堅物なのであるゆえ、それを求めるのはないものねだりであり、分不相応ということになるのだろう。

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<きょうの一枚>

ウラディミール・ホロヴィッツ、ショパン・アルバム
ASIN: B01L5WLSRK
JAN: 4547366272963

ショパンを聴くならやはりホロヴィッツというのが私の選択。1970年代初めごろの第2絶頂期の演奏ということで、まさに脂の乗った、水を得た魚の泳ぎを思わせる。ホロヴィッツの指にはタコのような吸盤がついていたのではないかと本当に思わせる唯一無二のタッチが随所に感じられる。