おもひでぽろぽろ

入学早々の頭勝ち割り事件【大井町三丁目のおもひでぽろぽろ32】

山中小学校に入学してまもなくのころ、ちょっとした事件があった。
 
私と友達が廊下を歩いて、右角を曲がろうとした時のことだった。
 
急に目の前に大きな人影が現れたかと思うと、出会い頭に衝突してしまった。
 
体の小さな私は後ろへ飛ばされ、運悪いことに柱の角に後頭部をぶつけてしまった。
 
*
 
相手は上級生だったようで、倒れた私を気遣って、「大丈夫か、立てるか」と声をかけていた。
 
意識のあった私としては、「はい、大丈夫です」としか言いようがなかったので立ち上がると、上級生たちはその場を去った。
 
実際のところ、私はあまり大丈夫ではなかった。
 
頭がくらくらして動けない。
 
明らかな脳震盪だった。
 
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一緒にいた同級生が、「先生、大変だ」と叫びながら走っていく声が聞こえたが、ずいぶん遠いところから聞こえていたような気がする。
 
おそらく、気を失ったのだろう。
 
保健室に運ばれた私を診てくれた先生は、私の後頭部を見て、「だめだ、割れてしまっている。病院へ急ごう」
と言ったらしい。
 
入学早々の救急搬送というお騒がせをしてしまった。
 
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これが学校でなければ、これまでのように多少の傷など自力で治るの両親の信念のもと、病院に行かなかったが、今回ばかりは舞台が学校だっただけにそうはいかなかったようだ。
 
病院で診てもらった結果、5針を縫う傷だったが、脳に損傷はなかったとのこと。
 
この後、私とぶつかった上級生はだれだったのかを追及するようなことはなかったと記憶する。
 
今のように小さなことに目くじらを立てる親もいなかったということなのだろう。
 
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後頭部の傷を触ると、5ミリくらいの高さで今も残り続けている。
 
その周辺は毛が生えていない。
 
昔は少し刈り上げたりすると、禿が目立ったりしてしまったが、全体が薄くなった今となっては全く気にならなくなった。
 
*
 
その衝突事故以来だろうか、視界不良のコーナーを曲がる時は必ず大回りするようになったのは。
 
人は横着なので、コーナーはなるべくインコースを攻めたがる生き物だ。
 
だからその性質を逆手にとって、アウトコースを攻めるとたいがいは衝突を免れることができる。
 
その知恵がもし小学校1年生の時にあったならば、生涯残る傷を負うこともなかったろうに。
 
そんなものあるはずない。