インド紀行

3段寝台でカメラ水没の危機【インド紀行39】

私の席は最上段だった。はしごで登る。3段の寝台はさすがに狭かった。起き上がった姿勢では頭がつかえてしまう。安いのだから仕方がないが、眠って時間を過ごす以外にないと早々に観念した。

 
さて、どのように眠るかが問題だった。荷物を置く場所がない。大きなリュックにカメラバッグ。これらを寝台の狭い空間でいかに処理し、一緒に眠ってあげることができるか。不可能な課題に見えた。
 
とりあえず、リュックと添い寝する形をとってみる。外側は当然、私の生身とならざるをえない。リュックを外側にしたら、眠っている間にいつ落下するとも限らない。いや、間違いなく落下してしまうだろう。となると、大ごとになる恐れがある。
 
問題はカメラバッグである。もう残されたスペースは全くなかった。考えた挙句、バッグを枕がわりにするしかないという結論となった。カメラバッグの枕は大きすぎて、眠るにはあまりにも首が急角度になりすぎ、寝心地は最悪であった。しかも機材を傷めないかという懸念もあり。バッグの中身を移動し、もっとも頭にフィットする形を整えてみると、ようやく何とか枕らしき感じが出てきた。
 
少し横になって眠ろうとすると、あまりに暑いことに気が付いた。さきほどの眠り体制を作ろうとあくせくしたことも原因だろう。汗まみれとなっていた。
 
タオルで汗を拭いていると、列車は突然、ガクンと振動した。どうやら出発したらしい。
 
窓を開けてみると涼しい風が吹き込んできた。気持ちがいい。一気に汗がひいていくのを感じた。
 
外を眺めると、のどかな農村の風景が続く。夕焼けにそまった農村は畑も家畜も人もすべて黄金色に輝いていた。
 
私はしばらく、車窓の風景にみとれていたが、中途半間な体勢が疲れてきたので、バッグを枕に横になり、目をつむった。
 
列車の規則的な振動音が心地よく体に響いてくる。やはり列車はいい。郷愁を感じさせてくれるというか。
 
列車の旅、そして郷愁などと思いを巡らせているうちに、私が小学校5年生の時、列車に乗り、一人で秋田まで行ったことを思い出してしまった。
 
快適な移動になりそうだ、私はそう感じながら、眠りに着いた。
 
寒気が走り、目が覚めると、顔が濡れていることに気がついた。車内の灯りは落ちているので、私はなかなか状況を理解できなかった。窓から水滴が吹き込んできている。雨だ。
 
慌てて窓を閉める。
 
窓の付近が濡れている。私は蒼白になった。
 
「まさかカメラが……」
 
カメラバッグの側面は既にびしょ濡れになっていた。私のバッグはフタをするタイプで、側面が開いているので、水は浸入しやすい。
 
暗い中で私はバッグを開け、手でまさぐってカメラの具合を調べてみた。わずかではあるが水が浸入した感がありありと伝わってきた。
 
もしカメラに浸水してしまっていたら……私はインド旅で始めての絶望的な気分に襲われた。